タワシとハリネズミ
タワシってなにかに似ていませんか。
そう、ハリネズミです。
ハリネズミのあのちくちくとした体躯。
ちんまりとした小動物なのに、恐ろしそうな棘。
可愛らしい顔に似合わず自己防衛は万全。
触ると攻撃してくるタイプなのはたしか。
ハリネズミも痛いし、タワシも痛い。
どちらもわたしを拒否してきそうな勢いです。
そんな両者に接近するものはいるのか。
ハリネズミのジレンマというものがあるでしょう。あ、ハリネズミじゃなくてヤマアラシのジレンマか。(ハリネズミのジレンマというのは「新世紀エヴァンゲリオン」で出てきます)
どちらにしてもちくちくとした棘をもっています。
近づけば近づくほど棘が刺さる。痛い。
近寄りすぎず、離れすぎずな関係。深入りはできない。
それと同様、タワシ対タワシも深入りはできない。硬いヤシの繊維が痛すぎる。(世間一般のタワシはヤシの繊維でできているそうです)。
そのタワシ同士は仲良くできないのでしょうか。
ぐっと近づけてみても一定の距離を保ったまま。
それならばヤシの繊維を滑らかにしてみよう。
使い古したタワシは一本、二本、三本と繊維が抜けていく。
そして癖がつき、ぺたっとヘタってくる。そう、まるで前髪がぱかっと割れた寝ぐせみたいになる。
そのタワシと新品のタワシを並べてみる。
距離が縮まった。ほんの数ミリ程度。
おお。関係が深まったかな。
という感動とともに、すこし寂しい気もしてくる。
なにしろ片方くたびれていて、もう疲れ切っている。ヨボヨボ。とげとげしさがなくなり、もうタワシとしての機能はほぼ皆無に等しい。
そして片方は棘の機能が半端じゃない。
その様子を見ていたら、なんだかまるで世代交代の瞬間をみているよう。
見ているのも物悲しいので使い古したタワシはゴミ箱へ。
新しいタワシひとつで充分です。大切につかいます。