【熱帯安楽椅子】山田詠美
山田詠美著の【熱帯安楽椅子】です。
山田先生の作品は何度か読んだことがあるのですが、どの作品も快楽に忠実に描かれている。
一つ一つの仕草、視線の動きが妙になまめかしい。
性行為は悪いこと、恥ずべきものだとは思わない。
それでいて快楽にのめりこみ過ぎない。
肉体的な感度より、精神的な感度を好む。だが、肉体から生まれる快楽を精神的な快楽に結び付ける表現が上手い。
山田先生は日本人だろうが、セックスについてとても寛容だ。それは欧米などのオープンなものと似ている。
男性ひとりに一生尽くしていくというのは、日本人の美徳(?)であろうが、そんなのは関係ない。
男への愛し方はさまざま。男からの愛され方もさまざま。
このひとをどんなふうに愛せるか。どんなふうに愛されるのか。それを知りたくてたまらない。
山田先生の登場人物は個性豊か。とくに男性が。
ワヤンという情熱的な男。
波乗りが好きな耳の聞こえない少年、トニ。
三角関係というほどのものではないが、“私”はワヤンからの奔放なセックスを堪能し、トニからは熱い視線を向けられる。どちらか一人を選ぶわけではなく、ふたりとも愛する。それが“私”にとっての“快楽”につながる。